ズームイン!ひふみびと_Vol.1 秋田稲美

〇秋田稲美(あきたいねみ)

ひふみコーチ株式会社 代表取締役社長
夢をかなえる目標達成ツール「ドリームマップ」考案者
チャリティラン&ウォークの仕組み「Run for Peace」考案者

―秋田さんは26歳で起業してから、ずっと経営者人生を歩んでいるそうですが、起業をどんなものだと感じていますか?

 一言で言うと、すごく面白いなと思っているんですよ。もちろん辛いことや苦しいこともあるけど

愚痴や不平不満言っている暇がなく前進あるのみ。そこに生きている感じがするというか。

ー「秋田さんのようにやってみたい!でも起業なんて自分には無理無理!」という人は多いと思います。

 怖がっている人が多いですね。起業のリスクに対して。でも私は大前提として、すべての人は起業家マインド”をもっていると思っています。それは例えば「自分を表現したい」とか「社会を心地よく変えていきたい」とか、そういった「自分らしく生きたい」という気持ちのことです。

 ただ、起業したくても、何から始めていいかわからないし、応援してくれる仲間がいない、導いてくれるメンターがいないという問題があります。逆にこの3点が整えば誰でも起業家になれる。そこをサポートできたらというのが「起業ひふみ塾」の目指すところです。

―どうやって三つの問題を解決しているのですか?

 まず「何から始めていいかわからない」ですが、これは例えば身近に起業したい人がいたら、その人の手伝いから始めるといいんです。手伝うなかで「私だったらこうするな」とか「もっとこうしたらいいのに」というのが見えてきて……。そして自分のやりたいことも、自分のやり方も見えてきて、そのうち自分でそれをやり始めますよ。

 二つ目の「応援してくれる仲間がいない」ですが、起業ひふみ塾はクラスを作って運営していて、これがまさに仲間作りなんです。8人がひとグループだとして、ひとりが起業したら残りの7人が全力で応援する。ひふみ塾の塾生同士が、それぞれの得意を持ち寄って助けるんです。 7人に応援してもらったら、たいがいのことは立ち上がりますよ。そして7人は応援することで起業のノウハウを学べるんです。さらに二人目、三人目と応援していく。すると全員が立ち上がる。ここでそういう仲間ができるんです。

 そして三つ目の「導いてくれるメンター」も重要な要素です。起業初心者にありがちなのが、起業経験のない人に相談してしまって、とんちんかんなアドバイスをもらったり、ブレーキがかかったりすることなんです。やっぱり豊富な知識と経験を持ったメンターがいる必要があって、ひふみ塾では起業20年以上の人がクラスのファシリテーターになることで実現しています。

―そもそも秋田さんがこうした起業支援を始めようと思ったのはどうしてですか?

 ひふみコーチ株式会社は、私にとって四つ目の会社(創業)になりますが、私の中で「起業家を育てること」は、ひとつのミッションだと感じ続けてきたんです。今年で15年目になる「ドリームマップ(*)」は、商工会議所主催の女性のための「創業塾」の1講座から始まりましたし、子ども向けの「ドリームマップ授業」も、経済産業省の起業家教育促進事業として、「子どもたちの中に起業家マインドを育てる」というプログラムのひとつとして始めたものでした。(*ドリームマップ:夢や自己実現を達成するためのビジュアルツール。講座では、参加者が独自の視点とアドバイスを受けて夢の地図を作成。それにより個人の主体的に生きる力の養成、グループでの目標共有などに効果を上げている 一般社団法人ドリームマップ普及協会が運営)。

 そして先ほどのような「起業はしたいけど……」という相談を、サラリーマンの方、主婦の方からたくさん受けてきて、手助けの方法をあれこれ考えていたところに、オンラインツール「Zoom」との出会いがあったんです。

―起業の手助け方法を見つけたと。

 そうです。起業家になるのって、何かの資格のように、この勉強をすれば終わり”じゃないんですよね。筋トレのように、常に向かい続けてメンテナンスしていかないと、事業って保っていけないものだと思っていて。このZoom(*スカイプのようなビデオ通話のアプリ)を使えば、自宅から継続して参加してもらえるフィットネスクラブのような「起業ジム」ができると思ったんです。

―PCが苦手な人でも参加ができますか?

 PCの知識はいらないですね。携帯電話が受けられるくらいの能力があれば大丈夫です。

―そうして起業ひふみ塾開始から1年近く経って、どんな感触を得ていますか?

 やっぱり必要なのはジムだったということですね。起業には学び続け、鍛え続けることが必要だからです。そして実際に起業の初めの一歩を踏み出す人、応援する人が出てきています!

 ひふみ塾には「ひふみビレッジ」という構想があるのですが、それは昔の商店街のように個人商店が並んでいるイメージです。「ウェブを作るなら、ひふみ村の○○さんに、キャッチコピーが必要なら○○さんにお願いしよう」。そういった塾生による助け合いのコミュニティーです。この「ひふみビレッジ」の目標「開村1年で100人の村に!」は、ほぼ実現しそうです。

―想定通りということですね。 

 はい。でもうれしい想定外が二つあって、そのひとつは、海外在住の日本人がたくさん入塾したことです。フランス、イギリス、カナダ、アメリカ、シンガポール……と約3割が海外の塾生なんです。これまでの私の事業はすべて「世界平和のために自分が何ができるか」を見つめて進めてきたのですが、人と人とがつながることが世界平和実現の絶対条件ですよね。ぜひ今後、世界中の人たちが入塾するひふみ塾になってほしいです。

 ところで海外の人たちの入塾の理由は何かというと、普段は海外で現地の言葉を話しながらも、一番得意な日本語を使えるビジネスの場や、日本人のクライアントさんを求めていることにありました。そうした海外の塾生の存在は、日本の人が海外へビジネスを広げていきたいときに心強いものになっていくはずです。

 もうひとつ想定外だったのは、すでに起業している人たちにも起業ジムのニーズがあったことです。自分が現場から離れても回るビジネスモデルを探している人たちが、「私たちのためにもクラスを!」と要望を寄せてきました。そうして通常のひふみクラスに加えて「ひふみプラス」のクラスが始まったのです。

―ところで、ひふみ塾のクラスの冒頭には1分間の瞑想をしますが、どんな意図があるのですか?

 起業塾というとノウハウを学ぶ場だと思われがちなのですが、起業ひふみ塾ってティーチングはしないんですよ。テキストもないし。それでも成り立つんです。それはみんなそれぞれの中に答があるから。火事場のバカ力じゃないですけど、人は本当に困るとなんとかする、本当にやりたいことだったら行動するんですよ。それは生きる力ですよね。起業も上場といった段階であれば、ノウハウを学ぶことも必要かもしれません。でも例えば、私の祖父は自転車屋さんでしたが、そうしたお店を経営するくらいのノウハウ、自分と自分の家族を養えるだけの起業力は、みんなすでにもっているんです。

 だからひふみ塾は教える「ティーチング」ではなくて、それぞれの力を引き出す「コーチング」をベースにしています。その力を発掘するために、意識を自分のなか、潜在意識に向ける作業である瞑想が最初に必要なんです。

―「起業は誰にでもできるもの!」とこうやって伝えても「いやいや、やっぱり秋田さんみたいな人だからできることで」と思う人もいるでしょうね。

 私の周りにいる人はみんな知っていますが、私ってハチャメチャで(!)。ひふみプラスの人たちの「人に仕事を振れない」という話を聞いていて気付いたんですが、私はもともとできることが限られているから、誰かと一緒でないと起業できない。だからこの起業塾もマッツー(松村直人さん)と始めて、私はクラス運営だけ、マッツーに窓口業務から何から一切任せてるんですよ。英語ときたら、いまだに「マイ・ネーム・イズ・イネミ」くらいしか言えない外人恐怖症ですし。でも現地の日本人を盾にして(!)海外で毎年2、3数カ月過ごしちゃうんですけど。

―”餅は餅屋”ですね!最後にもうひとつ質問です。ひふみ塾と塾生が今後どうなっていってほしいと思いますか?

 この1年かけて、この事業の理念を表せる言葉に着地しました。「あらゆる人の一番の幸せをさがそう」です。あらゆる人が一番の幸せに気づく、そういうコミュニティー、そういう村、「ひふみビレッジ」になるのが願いです。

_どうもありがとうございました。

 

 

ライターことりの感想

秋田さんの話を聞いているうちにこんな風に思えてきました。起業し、自分でビジネスを進めるなかでは、うれしいことと同時に、苦しいことも失敗もある。考えてみたら、人生だって同じこと。起業は人生。特別なことではない自然なものなんですね。

by ライター・ことり

 

〇秋田稲美(あきたいねみ)

ひふみコーチ株式会社 代表取締役社長
夢をかなえる目標達成ツール「ドリームマップ」考案者
チャリティラン&ウォークの仕組み「Run for Peace」考案者

〇プロフィール

「あらゆる人の一番の幸せをさがそう」を経営理念に掲げるひふみコーチ株式会社は、独自のコーチングメソッド「ひふみコーチ」を用い、コーチングをコミュニケーションスキルではなく、幸せな人生を生きる哲学として広めることに尽力している。

親や先生のためのコーチング、ビジネスパーソンのためのコーチング、プロフェッショナルコーチ養成講座をオンラインワークショップで提供。また、小・中・高校生に、自分の頭で考える人を育てる「ひふみコーチング」を出張授業で届ける活動も積極的に行う。

2016年1月に始めたオンラインのグループコーチング起業塾「起業ひふみ塾」は、塾生の30%が海外在住者が参加するなど好評。

『自分をひらく朝の儀式』『自分をゆるめる夜の儀式』(かんき出版)『できる上司の必須スキル 女心をつかむ魔法のことば』(大和出版)『上司になったら覚える魔法のことば』『ここではないどこかに、自分の居場所や働きがいのある職場を探しているあなたへ』(中経出版)など、著書多数。

〇略歴

9歳のときから女性の幸せについて考えはじめる。人生のテーマは「女性に生まれてきたことに感謝し、幸せを探求する」こと。

26歳の時、フリーのパソコンインストラクターとして開業、5年後に有限会社エムズコンピュータ創業。創業2年目、主婦を中心とした女性スタッフで1億2000万円の研修売上を上げ、各地の起業家セミナーに講師として呼ばれた経験からドリームマップ®を考案。

2003年、事業内容をコーチング研修とセミナー講師養成を柱とする人材開発事業にシフトする。名古屋市より「平成21年度/女性の活躍推進企業認定 個人表彰」を受ける。

2011年、東日本大震災のボランティアを切っ掛けに「Run for Peace~世界を結ぶ私の一歩~」を理念に掲げた一般財団法人ラン・フォー・ピース協会設立。

2012年、ドリームマップ誕生10周年を記念し「ドリームマップ~世界へ、未来へ、夢のチカラでWorld Peace!~」を理念に掲げた一般社団法人ドリームマップ普及協会設立。

2016年、オンライン会議システムZOOMを使い、世界とつながるコーチング勉強会を発足し「あらゆる人の一番の幸せをさがそう!ひふみコーチ株式会社」を創業、代表取締役社長に就任。現在に至る。

 

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